Claudeを中心に仕事でAIを使ってきた私が、あらためてChatGPTに正面から向き合い、実務に組み込んでいった記録です。最初はメールの添削から始め、カスタム指示で「自分」を教え込み、対外的な文章まで任せられるようになりました。その途中で、日付のずれ、もっともらしい誤情報、こちらの意見に同調しすぎる傾向にもぶつかりました。

先に結論を書きます。今の私は、ChatGPTを「考える頭脳」、Claudeを「決めた型どおりに手を動かし続ける作業者」として使い分けています。一つのAIに全部を任せようとしていた時期より、どちらか一方に過度な期待をかけずに済み、仕事の質と速さの両方が上がったと感じています。

この記事は、以前7章に分けて連載していた「経営者のChatGPT導入記」を、つまずきと判断の流れが一度に読めるよう1本にまとめ直したものです。機能を網羅的に解説するものではなく、経営者の実務の中で何に驚き、何につまずき、どう落ち着いたかの記録です。

導入の7段階を先に一覧で

段階 やったこと 分かったこと
1. 向き合った理由 Claudeを使い込んだうえで、あえてChatGPTを試す 比べることで、それぞれの向き不向きが見える
2. 最初の作業 自分が書いたメールを添削させた 読みやすさに驚いたが、自分らしさが消えた
3. カスタム指示 自分の人物像を教え込み、音声入力で情報量を増やした 渡した情報の質で、答えが変わる
4. 業務への組み込み 返信メールから対外発表の文章へ範囲を広げた 手直しが若干で済むようになった
5. 失敗 日付のずれ、誤情報、意見への同調に直面 日付・数字・固有名詞は必ず自分で確認する
6. 役割分担 ChatGPTを「頭脳」に位置づけた 万能を求めず、得意不得意で分ける
7. 作業者 作業者役はClaudeに任せた 方針を決める工程と、続ける工程を分ける

1. なぜ今、ChatGPTに向き合ったのか

理由は3つありました。生成AIという分野を世の中に広めた最先端のサービスであること。私自身が、効率化のためだけでなく「これはどこまでできるのか」という好奇心で新しい道具を試す性格であること。そして、一度触れてみて、この技術は完成しているのではなく、これから大きく発展していくと感じたことです。経営者として、事業や業務のあり方に影響する技術には、早い段階から向き合っておきたいと考えました。

それまでの私は、経営判断や資料作成でClaudeを中心に使ってきました。一つの道具を使い込むことにも価値がありますが、同じ生成AIでも個性や向き不向きがあるはずで、比べることで見えるものがあると考えました。

2. 最初はメールの添削。驚きと違和感が同時に来た

特別な使い方ではなく、毎日発生する作業から試そうと考え、自分が書いたメールを渡して「読みやすく整えてほしい」と頼みました。結果には率直に驚きました。回りくどい表現がすっきり整理され、要点が一目で分かる文章に変わっていたからです。

一方で、読み返すとどこかよそよそしく、機械的に感じました。普段の言い回しや話し方のくせが消え、整いすぎて「自分が書いた文章」という感じがしなかったのです。この経験から、AIの添削は「正解」ではなく「選択肢の一つ」だと考えるようになりました。読みやすさを優先したいメールと、自分らしさを残したいメールでは任せる度合いを変え、仕上がった文章に自分の言葉を少し戻す一手間を入れるようにしました。

3. カスタム指示で「自分」を教え込んだ

違和感を減らすために使ったのが「カスタム指示」です。設定の「パーソナライズ」の中にあり、自分についての詳細を入力しておくと、以降のやり取りにその人物像が反映されます。

私は、自分がどういう人間で、どう考えるかを言葉にして入力しました。それに加えて、それまでの会話の履歴から「私がどういう人間だと思うか」をChatGPT自身に分析させ、その結果も指示に組み込みました。自分で自分を説明するだけでなく、AIから見た自分の姿を取り入れる、少し変わったやり方です。

さらに、文字ではなく音声入力で情報を伝えるようにしました。話し言葉だと、細かいニュアンスや前提条件まで、文字よりずっと多くの情報を伝えられます。体感として、回答の精度が明らかに上がりました。設定を整えた後の文章は、完全に自分そのものではないものの、以前よりずっと「自分が書いたもの」に近づきました。生成AIは、ゼロから最高の答えを出すものではなく、渡した情報の質に応じて答えが変わるものだと実感した段階です。

4. 返信メールから、対外的に発表する文章へ

カスタム指示を整えてから、まず日常の返信メールを本格的に任せるようになりました。以前は下書きをそのまま使うことに抵抗がありましたが、人物像を反映させたことで、その抵抗が薄れていきました。

手応えを感じて、社外へ発表する文章や、人前で話すときの発言内容の作成にも範囲を広げました。言葉選びに一番気を使う場面です。以前はAIが作った文章を大幅に書き直していましたが、このころには細かい言い回しを直す程度で済むようになり、文章作成にかかる時間そのものが大きく減りました。

範囲を広げるときに意識したのは、いきなり重要な発表文を任せないことです。対外的な文章は、内容を誤ると信用に関わります。まず重要度の低い文章から試し、問題がないことを確かめながら少しずつ広げました。最初に時間をかけて自分を教え込んだことが、結果的に最も効果の大きい投資だったと感じています。

5. 便利さに慣れた頃に直面した3つの落とし穴

任せる範囲が広がると、当然、失敗も経験しました。

日付と曜日のずれ

一番困ったのが、日にち・曜日・年の誤りでした。文章の誤りなら違和感で気づけますが、日付と曜日の組み合わせのずれは、ぱっと見では気づけません。少し先の予定について書かれた文章で、その日が何曜日かを確かめる習慣がなかったため、気づかないまま進めそうになったことが何度かありました。

もっともらしい誤情報(ハルシネーション)

存在しない情報や事実と違う内容が、もっともらしく出てくる場面もありました。文章の質が高いだけに、内容まで全部正しいと錯覚しそうになります。

こちらの意見に同調しすぎる

相談すると、こちらの考えを肯定する方向の答えが多く返ってきました。反対意見や別の視点が欲しいときほど、判断の材料にならないもどかしさがありました。

この3つを経験して、日付・数字・固有名詞は必ず自分で二重に確認する習慣を徹底しました。意見については、「反対の立場から意見をください」「批判的な視点で見てください」と頼むことで、同調しすぎる傾向をある程度和らげられることも分かりました。得意な構成や表現は任せ、苦手な日付の管理や客観的な判断材料は人が補う。AIに完璧を求めすぎないという心構えが、この段階の一番の学びです。

6. ChatGPTを「頭脳」にする役割分担

使い込むほど、得意なことと苦手なことがはっきりしてきました。最初はChatGPT一本で全部をこなそうとしていましたが、次第に「これは別のAIの方が向いているのでは」と判断する場面が増え、一つのAIで完結させる考えから離れていきました。

今はChatGPTを、方針の整理、複数の選択肢の比較、物事の全体像をつかむといった「考える」役割に使っています。カスタム指示で設定した人物像が一番生きるのも、この場面です。一方、文章の量産や資料の細部の作成など、実際に手を動かして形にする作業は別のAIに任せています。複数のAIを使うと手間が増えるように見えますが、それぞれの弱点をもう一方が補う形になり、結果的に全体の質と速さが上がりました。

7. 作業者役はClaudeだった

私の場合、「作業者」を担っているのはClaudeでした。任せている作業は3つです。

  • ブラウザ上で会計ソフトを継続的に確認させ、日々の記帳に異常がないかを見張らせる
  • 社内の承認の仕組みの中で、仕訳のリスク判定を任せ、全体の件数のうち何件にリスクがありそうかを確認させる
  • 受信したメールを重要度の高い順に並べ替え、返信文の下書きを用意させる

リスクが件数で見えるようになったことで、感覚ではなく数字で大きさをつかめるようになりました。忙しい時間帯でも、優先すべきメールと返信の下書きがすでにそろっているため、対応も速くなりました。いずれも、決まった型の中で途切れずに続けることに価値がある作業です。

流れとしては、ChatGPTとの相談で「どんな基準でリスクを判定するか」「どんな観点でメールの優先度を決めるか」という方針を固め、その方針に沿った日々の実行をClaudeに任せています。方針を決める工程と、実行し続ける工程を分けたことで、それぞれの役割がはっきりしました。なお、会計に関わる最終的な判断は、AIに任せず人が行っています。

振り返って

ChatGPTの導入は、「文章がうまいAIを手に入れた」というより、「自分の考えを渡す方法」と「任せる範囲の決め方」を学ぶ過程でした。最初の違和感、カスタム指示への投資、失敗からの確認習慣、そして役割分担。どの段階も、AIの能力そのものより、人がどう使うかで結果が変わることを示していたと思います。

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